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読書とギターとブログと |2008年10月
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読書

スクールアタック・シンドローム (新潮文庫 ま 29-3)スクールアタック・シンドローム (新潮文庫 ま 29-3)
(2007/06)
舞城 王太郎

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 正体不明の覆面作家、舞城王太郎の作品集。

 舞城さんの文章は非常に攻撃的だ。息つかぬ間に繰り出される言葉の連続は、町田康ほどロックさはなく、強いて言うなら佐藤友哉に近いようで、無駄な描写を省いて感情を書き鳴らす文体は、まるで肉食動物の獰猛さを備えている。
 まぁ、つまり、かなり特徴的な文体だということ。
 
 クセとアクが強いので、好きな人はハマルし嫌いな人は生理的に受け付けないタイプの作家だな、と思った。内容もしかり。

 で、正直、僕はキツかったです。特に最後の書き下ろしはライブ前に読むんじゃなかったと後悔した。まー、バトルロワイヤルよりは楽しめる本です。きっと
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読書

フランケンシュタインの方程式―梶尾真治短篇傑作選 ドタバタ篇 (ハヤカワ文庫JA)フランケンシュタインの方程式―梶尾真治短篇傑作選 ドタバタ篇 (ハヤカワ文庫JA)
(2003/09)
梶尾 真治

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 SF好きはみんな知ってるだろう梶尾真治の短編集。

 梶尾さんはどうもパロディ物が、いやあえてオマージュと呼ぶか、が得意な方で、この作品集にとどまらず、僕が梶尾さんを知った「もうひとりのチャーリィ・ゴードン」もパロディになる。
 ちなみにこの作品集のほとんどがパロディ。さすがに元ネタが全部分かるほど僕はSF通では残念ながら無かったけれども。

 表題作「フランケンシュタインの方程式」は、二人乗りの宇宙船に事故で一人分の酸素しか積まれてなかったら、という状況を描いた作品「冷たい方程式」のパロディ。今作では、なぜか酸素ボンベの代わりにミソ樽が積まれて酸素が足りない、などユーモアたっぷりに創られる。
 困った二人は自動手術装置で体を半分に切り、互いの体をくっつけて無理やり一人の人間にして生き延びようと決意するのだが・・・。

 二人が頭からくっついている姿はなんだかマジンガーのあしゅら男爵のようで妙に笑えたり、これが筒井康隆だったら「ぎゃっ」とか「うひひ」とかの擬声語を入れそうだな、とか思ったりしながら楽しく読めていたが、暢気に楽しんでいただけに、ラストは衝撃的だった。

 この作品集全体に言えるのは、設定や発想が突飛で加えて軽妙な語り口で話が進むため、非常に心地よく読み進めるのだが、その分最後に憂鬱な暗めのオチを持ってこられるとギャップが激しい、ということだ。やらしいことに、割とほとんどの作品がそんな感じ。
 最後に待ちうけるのは、恐怖でも怒りでもなく、諦観、とでも言おうか。まるで主人公になりきったかのように絶望を味わわせてくれる作品集はそうはないだろう。

 さらに作品ごとの元ネタがわかればなお、面白いのだろう。10年後にもう一度読んで見たいと思った。そのときは、きっとまた違う面白さが味わえることだろう。 

読書

ニッポニアニッポン (新潮文庫)ニッポニアニッポン (新潮文庫)
(2004/07)
阿部 和重

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 阿部和重の作。題から分かるようにトキをめぐった作品になる。

 引きこもりの主人公は自分の姓に使われる鴇の漢字からトキの存在に興味を持ち、その姿に身勝手に自分の姿を重ね、投影していく。彼の思考の暴走はとまらず、やがて彼はトキを殺そうと思い立ち・・・

 この作品にはインターネットの情報がよく提示される。インターネットから広がる世界だけで、彼はトキの保護環境、警備状況を知り、武装装備を買い揃えてしまう。そのネットからの実際の記述は現実感を与え、さらによく挿入される数字がよりリアリティを出す効果を持っている。

 切れやすい現代の少年の姿を描いた・・・などと言うのはたやすいが、僕はむしろ記号的なテクストとして素晴らしいと思った。僕=トキから始まり、特に象徴的なのは物語の最後に挿入されるクイーンのボヘミアンラプソディだろうか。
 解説でしったのだが、この本の表紙のデザインはクイーンのアルバムのデザインのパロディらしい。さらにそこに描かれる二人の妖精は、カードキャプターさくらと瀬川おんぷの姿がこっそり描かれ、そこからこの作中に出る二人の女性の苗字との関係が見えてくる。
 
 それに意味があるとかないとかはよく分からない。ただ、こういう読みもできる文学は、素晴らしいものである。面白いものである。僕は、そう思う。

読書

蝿(はえ) (異色作家短篇集)蝿(はえ) (異色作家短篇集)
(2006/01)
ジョルジュ ランジュラン

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早川の異色作家シリーズ。今回はジョルジュ・ランジュランの「蠅」。
 この早川シリーズは、いつも前書きが豪華なんだけど、今回もその例に漏れずなんどジャック・ベルジェが書いてた。いやあ、すごい。

 さて。表題作の「蠅」。「ザ・フライ」という映画は聞き覚えのある人が多いと思うけれど、その原作にあたるらしい。
 物質転送装置を発明し、自らが実験台に立った時に、自分と共に蠅を転送してしまった科学者の悲劇を恐ろしく描いた作品。
 転送装置でやっちゃったタイプの作品は今日ではそう珍しくはないけれど、この作品の見事さは、その発想だけでなく、描写力にもあるといえる。
 科学者の妻の視点からでも話を作れたのに、あえて、話の語り手をその義兄という完全に第三者の視点から描くことで、よりじわじわと核心に迫っていくことができ、衝撃の事実を知ったときに僕達読者はよりいっそう身も凍る恐怖を味わうこととなる。

 それだけではない。伏線としての白猫や、窓に張り付いた蚊の死骸など、所々に散りばめられた小物が僕の視線をちらつかせ、不安にさせる。部屋に一人っきりでいるときにふと感じる何かしらの視線のような―そんな怖さ。
 
 「忘却への墜落」や「安楽椅子探偵」などは主人公の語りで話が進められるが、その語りのトリックを使った作品。安穏と読んでいた僕はまんまとだまされ、最後に口をあんぐりあけて、ヤラレタと頭を叩く。

 ランジュランを分類すると、SFというより、ホラーに近いのかもしれない。ダークなどというより、それは純粋なる恐怖が横たわる。だが、面白い。やめられない怖さ。目を隠しながらその隙間からついつい先を覗いてしまうような魅力は、やっぱりホラーのそれだ。

読書

レトリック探究法 (シリーズ日本語探究法)レトリック探究法 (シリーズ日本語探究法)
(2004/05)
柳沢 浩哉香西 秀信

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 修辞法としてのレトリック本だと思って借りたんだけど、どっちかというと弁論術としてのレトリックがメインで、ちょっとがっかり。作者オリジナルのコピーとかがちょっとお粗末で笑えてしまったり。

 でも「坊ちゃん」に見る作者の強調点とか、勉強になることも多かった。特に「現在感」を出す手法はすごく納得

読書

西瓜糖の日々 (河出文庫)西瓜糖の日々 (河出文庫)
(2003/07)
リチャード ブローティガン

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 日によって色の変わる西瓜と糖を作り、それらで全てが成り立つ不思議な世界アイデス。そこは静かで平和な世界。皆が共に食事を取り、争いの姿は陰も見えない。その形はSFなどで示される幸福な未来の世界のようだ。
 それと対をなすのが忘れられた世界だ。そこには忘れられたモノがあり、荒くれ者のインボイルが仲間を集めて酒を飲んで暮らし、マーガレットが興味を持って憑かれたかのように通う所だ。

 ブローディガンの代表作の本作は、短文が章ごとに綴られる。小説なのか、それとも詩なのか。そんな疑問すら抱かせる外見はに僕は高橋源一郎の「さようならギャングたち」を思い出した。

 物語の中で、インボイル達は「おまえ達はアイデスのことを知らない」と言って、鱒の養殖場で自らの体をジャックナイフで切り刻んで息絶える。彼はこうもいう「虎を殺してはいけなかった」と

 アイデスはとても素敵な世界だ。人々はいつでも使える小屋を持っていて飢えることはなく、資本主義とも社会主義ともつかぬ緩さのなかでまったりと生きることが出来る。そこには争いも苦しみも無いが、成長も、無い。

 忘れられた世界について何も具体的な記述は無いが、僕はまるで今僕達が生きる世界のような印象を受けた。虎とは明確な「敵」としての象徴。虎の排除は敵の不在となる。敵のいない世界に、思考と発展は不可能だ。

 物語の最後は自殺したマーガレットを悼む祭りの章で終わる。 皆はマーガレットの死を悼み、悲しんでいるはずだが。
 なぜだろう。僕には皆が、アイデスに生きる自分達の姿を悼んでいるように感じたのだった。

 難解とか言ってこういう作品を嫌う人もいるかもしれない。だが、パズルのように読み解ける本はとても楽しい。本は思考を促し、思考は本の見えない部分を明らかにする。だから本は素晴らしい。

読書

天使の蝶 (光文社古典新訳文庫 Aフ 5-1)天使の蝶 (光文社古典新訳文庫 Aフ 5-1)
(2008/09/09)
プリーモ・レーヴィ

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 オカルティックな本。ボルヘス好きな人はストライクだろなー。

 光文社だから僕は知らないけど良い作家なんだろうと思ったら、ストレーガ賞取ってる作家だった。凄い人なんですな。

 短編だが、ショートショートと言って良いくらいの短い物語が並ぶ。化学者の知識を生かして発想はとても大胆かつ斬新。特に表題作「天使の蝶」はどこかで聞いた気もするけどとても興味をそそられた、のに、オチがもったいないな、と思った。他の作品ももっと話を膨らませれるのでは?と思う話がいくつかあったのが前半の印象。

 それが怪しい商人シンプソン氏と私のシリーズが作品の合間合間に頻繁に挿入されるようになって、この本の面白さが増大する。次々と胡散臭いが魅力的な商品を売り込みに来るシンプソン氏は、憎めない一方で笑うせーるすまんのような薄ら怖さも覚える。
 最後にシンプソン氏が自ら破滅に進むさまは、人の性を目の当たりにしているような気がした。

 ボルヘスをオマージュしているかのように、語りや架空の資料による説明などが多く、設定もわりと真実味を帯びていて、僕はどこまでが真実でどこまでが創作なのかよく分からなくなってくる。その混乱は、架空の話とリアリティのあるシンプソン氏の話が交互に来ることで、余計に僕を混乱させる。だが、それはなんだかとても心地良い。
 里美八犬伝のように虚と実を織り交ぜながら、すべては虚であるという事実。それはまるでこの世界を現しているようで・・・
 
 この本は短編集である。だが、それ以上に一冊の作品である。全ての短編集が「天使の蝶」という作品をつむぎ上げる織物のような本。本当に見事な短編集を読ませてもらった。

読書

一億三千万人のための小説教室 (岩波新書 新赤版 (786))一億三千万人のための小説教室 (岩波新書 新赤版 (786))
(2002/06)
高橋 源一郎

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 高橋源一郎の書く、小説についての本。

 冒頭で書かれる、「私が知っている限り「小説の書き方」を読んで小説家になった人はいません」は、いや、まさにそうだろうなー、と思った。

 述べてある通り、この本は小説家になるための近道を教える本ではない。小説とは何か?というものを捕まえるための本だ。
 高橋源一郎はよく同じ題や引用で話をするので、以前に何冊か高橋さんの話を読んでいると、言いたいことがとても理解しやすい。反面、ちょっとマンネリ感は否めないけれど。

 説明は難しいんだけど、これは、とってもタメになる。小説って僕達が思ってるよりすごく簡単で、とっても難しいものだということがおぼろげながら見えてくる。これを読むと、僕にも小説が書けるような気がするし、一生書けない気もする。

 確かなのは、この本は、僕達に「小説」というものについて考えるきっかけを与えてくれる、ということだ。僕達は小説や言葉についてあまりにも、無関心すぎる。すぐそばに、いつも氾濫しているからそれらをよく知っているように思ってしまう。
 でも、そんなことはない。ぜんぜん、ない
 
 もっと小説について、言葉について考える時間が欲しい。真摯に向き合ってにらめっこしたい。
 今、僕はそう思う。あまり時間はないけれど。

読書

まだ人間じゃない (ハヤカワ文庫 SF テ 1-19 ディック傑作集) (ハヤカワ文庫 SF テ 1-19 ディック傑作集)まだ人間じゃない (ハヤカワ文庫 SF テ 1-19 ディック傑作集) (ハヤカワ文庫 SF テ 1-19 ディック傑作集)
(2008/03/07)
フィリップ K.ディック

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ブレードランナーの元作品 「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」で有名なディックの短編集。

 SFの短編集は、わりと暗かったり文明批判入ってたり的な作品が多いように思うのだが、ディックの作品は確かにそれらの要素を持ち合わせた上で、その中にユーモアセンスが漂っているのが秀逸。
 
 1作目の「フヌールとの戦い」では、迫り来る地球の危機にもかかわらず、全員が同じ姿に化ける特徴を持つフヌール人のバカっぽさに忍び笑いを禁じえない。「運のないゲーム」では憂鬱モノかと思いきや、最後に持ってきたオチはなんだかホッとして、同時にニヤリとさせられる。

 そんな作品もあれば、まさに現代の姿でもある広告の反乱しすぎる世界を描いた「CM地獄」や(なんか星新一でこんなの読んだ気もするのだが)、最後の「まだ人間じゃない」では明確に中絶反対の立場を掲げて社会批判を行っている。これに関する作者の作品メモが巻末についており、とてもウイットに富んでいるのでぜひ見てみて欲しい。

 玉石混交などとは言わない。全て玉なのだが、それぞれの玉が七色に輝いてそのイルミネーションの違いを楽しめる本に思う。いやあ、面白かった。
 やっぱり、SFって、素敵、ですよね。本って良いなぁ

読書

都市伝説セピア都市伝説セピア
(2003/09/23)
朱川 湊人

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 直木賞作家、朱川湊人の作品集。彼がオール読物推理大賞でデビューした作品「フクロウ男」も収録されている。
 
 朱川さんの作品はホラーというか、なんというか、世にも奇妙な物語テイストというか、ミステリーとも違う、強いて言うならオカルト好きな人が割りと好きそうなタイプかな、と思う。

 題名にある通り、都市伝説、小さい頃七不思議とかで聞いたような話をテーマとしてそれぞれの作品が織られている。過去に戻れる公園の話とか、ほうほうと鳴くフクロウ男の話。フクロウ男に関しては、一人の人間が憑かれたかのように「フクロウ男」という存在に心も体もゆっくり変化していく様がなんともいえない怖さを秘めていて見事だと思ったのだが、これの凄かったのは、先のシェクリイでも使われた主人公自身の語りによる自身のトリックがもう一つ最後に隠されてたことだろうか。

 どれも面白かったが、個人的にはカッパの氷付けの話である「アイスマン」が心に残った。人外の物としてのカッパと人となじめない僕の対比と、おどろおどろしさの中に光るほのかなエロス。
 「膨らみはじめた胸元を、わざと私に見せ付けているようでした」という一文がかるく挿入されるだけで、祭りの中を駆け回る少女が急に生き生きとしてきて、その生々しい肉感が最後に受ける衝撃をより大きくする。
 鮮やか、というのはこういうことを指すのだろう。

 オカルト好きとしてとても楽しめた本。こういうの、いつか書いてみたいですね。ほんと

読書

人間の手がまだ触れない (ハヤカワ文庫 SF シ 2-4)人間の手がまだ触れない (ハヤカワ文庫 SF シ 2-4)
(2007/01)
ロバート・シェクリイ

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シェクリイの短編集。どれも非常に出来のすばらしい作品なのだが、作品全体に通じてあるのは、思い込みや、考えのすれ違いといったものを上手く使ったトリックが多いな、という印象だった。

 一つ目の「怪物」はよくある手法といえばそれまでだが、文中で何度も「人間」という言葉を使うことで巧みに読者に作品の中心は我々地球人だという先入観を与えるが、実はそもそも「人間」は我々と同じ「人間」では無く、彼らの言う怪物こそが我々人間だったというオチ。こういう語りの省略で主人公の姿を惑わすトリックは推理小説などでも良く使われる。

 個人的に好きだったのは最後の作品「静かなる水のほとり」か。ロボットと主人の静かな話。たぶんあえて他の作品とテイストを変えて最後に相応しい、静かな作品に仕上げている。こういう静寂に満ちた作品、好きですね。

読書

フェッセンデンの宇宙 (全集・シリーズ奇想コレクション)フェッセンデンの宇宙 (全集・シリーズ奇想コレクション)
(2004/04/15)
エドモンド・ハミルトン

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 キャプテン・フューチャーで有名なハミルトンの短編集。

 キャプテン・フューチャーのあまりにも明るいテイストが印象的なので、てっきりそういうのを得意とされる作家だと思っていたら、なかなかどうして。
 全体的に通して感じたのは、ふとした恐怖とか、存在への疑問とか、底冷えする作風。
 あらゆる当たり前のことを、実は当たり前じゃないんじゃないかと考えて作品を作っていく。表題作「フェッセンデンの宇宙」は入れ子型の話で、僕達にしてはもう手垢にまみれたタイプの話だが、その金型の作品。何もこういうタイプの話を知らずに、僕がこの話を読んだらサッと血の気の引いてしばらく考え込んでたんじゃないだろうか。

 こういう作品を書ける作家だから、キャプテン・フューチャーのような作品が生きてくるし、フューチャーがあるからこういう作品が映えてくる。ハミルトンの作風の幅広さを感じた小説だった

読書

箱舟の航海日誌 (光文社古典新訳文庫 Aウ 1-1)箱舟の航海日誌 (光文社古典新訳文庫 Aウ 1-1)
(2007/04/12)
ウォーカー

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おなじみ光文社シリーズ。

 舞台はノアの箱舟。まだまだ僕達の知らない動物達が生きていた頃。当時はオオカミやライオンも肉食ではなくて果実を食べ、シカやリスなどと仲良く暮らしていたという。
 そんな中、雨が降り出し、動物達はノアの箱舟に逃れていく。その中に紛れ込んだスカブという生き物がいた。
 皆、箱舟の中で互いに譲り合いながら生きていたが、そんな中に、スカブが巧みにへつらい、また取り入り、皆の心の中に潜む疑念や不安をあおって行く。いつの間にか動物達がギクシャクし始め、オオカミ達がウサギなどを見る目も変わりだす。

 作者はそこまで有名ではないみたいだが、なんというか、面白かった。作者の描いたのか、非常にキュートな挿絵も素敵。
 閉塞された空間でゆっくりと広がる不信感。一度取り付かれるとどうしようもない本能。人や動物の本能というか、どうしようもない邪悪な性質というものがスカブという存在に象徴されている気がした。
 そしてスカブも生まれは優しい動物だったという。彼のダークサイドもある日突然生まれてしまう。それはどうしようもないこと。人の他人を妬んだり羨んだり嫉妬したり、そんな心も人はどうしようもない、そんなものなのかもしれない。
 だからこそ、最後にノアはもはや心が通えない動物達を見送るしかなかったのではないだろうか。また、そうした念があるから僕達は成長していける。そんな気がする。

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あらゆる場所に花束が… (新潮文庫)あらゆる場所に花束が… (新潮文庫)
(2005/04)
中原 昌也

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やさぐれ作家、中原昌也による三島賞受賞作。

 なんというか、まぁ。町田康に近いといえば近いんだけど、町田さんの怒りが割りと内に向けられるのに対して、中原さんのそれは自分の周りのあらゆるものに向けられている気がする。それでも二人が似ている気がするのは、やはりどちらも音楽をやっているため、文章に載せられるリズムのようなものがあるせいだろうか。

 内容を説明できるほど僕はこの本を深く読まなかったし、読めなかった。というか話はあるのか? とにかく断片的にまるでしりとりのように細切れになった話が絡み合い、進んでいく。

 なんだkよく分からないけど、これは誰にも書けんわぁ、と凄みを感じた作品でした。

読書

乱調文学大辞典 (角川文庫)乱調文学大辞典 (角川文庫)
(1986/02)
筒井 康隆

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筒井康隆による怪しい辞典。ビアスの「悪魔の辞典」筒井版と思えばよろし。

 だいたい胡散臭い意味が載っているのだが、時々本当の意味も混じっているから、どこまでが創作でどこまでが本物なのかが分からず、また面白い。
 チャンドラーの意味が「支那の虎」って書いてあったりする。そんなバカなw

 巻末付録の「あなたも流行作家になれる」は報復絶倒モノ。作家を目指す人はぜひ読んで見よう。
 ホント、筒井さんだけは本を読むたびにさすがだなぁ、と思う。さすがだわー

読書

図書館戦争図書館戦争
(2006/02)
有川 浩

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最近アニメ化もされて話題になった本。ライトノベルなのにハードカバーとはこれいかに?

 本の表現の自由を謳い、それを死守する立場の図書館と、検閲と言う名で本を取り締まる良化委員会の対立がまずあり、その抗争が動きながら、図書館の防衛部隊である図書隊に配属された女性のラブコメがうるうると進む、と。

 発想は斬新で、最初の方はサクサク読めて面白かったのだが、途中からどうも盛り上がりに欠けた感を持った。というか、読み終えてみればなんかすごい中途半端な感じがした。
 「図書館」というモチーフをもっと掘り下げたいならボルヘスの「バベルの図書館」を下敷きに軽くひけばもっと深みが出ただろう。本の表現の自由云々なら、良化委員会側の視点も入れたり、筒井さんの断筆話とかを間テクストとして入れても良かったろう。主人公の戦争下における成長物語ならハインラインかいっそガンパレで事足りるし、同じ日本人同士の争いなら三崎亜紀の「となり町戦争」が金字塔。

 いろんな方向に話を掘り進めれたのに、なんだかどこもさらっ、と撫でているだけで僕はうずうずしてしまった。だけれども、だからこそ売れたのだとも思う。だからこそ、読みやすいのだと思う。これはこれで一つの形だな、とも思った。

 あと、この本を読んでて見事だと感じたのは、本の影響云々で犯罪を起こしたとか言われる少年の話が挿入されていること。往々にしてベストセラーは数年後の事件をその作品で予見しているものだけど、これはまさに最近の事件とそれへのメディアの対応そのもので、あー、こりゃ売れる本だ、と僕は頷いたのであった。

 なんだかんだ言いながらそこそこ面白かったけど、僕の胸の中に居座るこの不快感は、きっと本で戦争しているからなんだろうな。本は神聖にして不可侵なモノ。人がそれをめぐって戦争したり燃やしたり撃ったりするためのものでは断じてない。僕は、そう思う。ていうか、この本において戦争をやる意義が良くわかんないけどまぁ良いや。

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日本語を生きる (21世紀文学の創造 別巻)日本語を生きる (21世紀文学の創造 別巻)
(2003/03)
谷川 俊太郎平田 俊子

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 谷川俊太郎、平田俊子、高橋源一郎の三人が、「高田さん 56歳」というテーマで小説・戯曲・詩を書く。

 巻末の三人の対談で気づいたのだが、谷川さんと平田さんが「高田さん」を脇役に配して書いているのに対し、高橋源一郎は終始「高田さん」が主人公として話が展開する。また、谷川さんは場所の移動がなく、場面がパッパッと切り替わる。
 このあたりに詩人と小説家の違い、というものが見られて非常に面白かった。

 同じく対談で述べていて印象に残ったのは、詩を書かなくても詩人になれるが、小説は書かないと小説家にはなれない、というもの。あー、確かにそうかもな、と思い、なんだかくすくす僕は笑った。

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海に住む少女 (光文社古典新訳文庫)海に住む少女 (光文社古典新訳文庫)
(2006/10/12)
シュペルヴィエル

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 なんとも表紙のデザインが毎回素敵ですね。光文社の外国文学シリーズ。今回はシュペルヴィエル。僕は知らなかったけど、ちょうど大戦くらいの詩人兼作家で、戦後の日本の詩人に影響を与えたと解説に書いてあった。

 詩人らしいから、言葉のきらめきに満ちた優しい物語か、前衛かだろうと予想したら、見事に裏切られた。とても優しく簡潔な言葉を使ってはいるのだが、その文体に反するかのように、残酷な話が続く。残酷な、というか美しい怖さ。とても耽美な香りがする小説。
 「ラニ」が象徴するように、人の本能的な差別とそれへの憎悪だったり、最後の「牛乳のお椀」はどこかで聞いた気がするけど、純粋な狂気のようなものが描かれる。どの作品にも言えることは、それらに潜む恐怖がとても澄んでいる、ということだろうか。思考の果てにあるのではなく、思考が読めない。ニコニコしながら人を殺すような怖さに似ている。だから恐ろしい。

 とても鋭く人を見つめる、詩人ならでは、というものを見せられた気がした。

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村上朝日堂 (新潮文庫)村上朝日堂 (新潮文庫)
(1987/02)
村上 春樹安西 水丸

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村上春樹によるエッセイ。村上春樹は特徴的な文体の人なので、どんなエッセイを書くのかとおもいきや、意外に普通なエッセイで驚いた。というか読みやすくて面白い良いエッセイだった。
 特に言うこともないのだが、なんだか作者が楽しそうな感じのするエッセイだった気がする。

読書

慈悲をめぐる心象スケッチ慈悲をめぐる心象スケッチ
(2006/08/29)
玄侑 宗久

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 ありがとう巨人、おめでとう巨人。万歳三唱

 それはさておき。現役僧侶でもある玄侑宗久の本。宮沢賢治の生涯と作品に触れながら、慈悲について述べていく。

 宮沢賢治は熱狂的、というほどではないが基本的に好きな作家なのだが、今回、あらためてその作品の美しさを再確認できた気がする。
 宮沢さんのオノマトペの使い方が秀逸だ、という話は以前井上ひさしが著書で書いていたのだが僕もまったく同感で、たとえば「どっどとどどうど」や「堅雪かんこ」といった言語リズムとセンスの良さは、努力ではどうしてもモノにすることはできない天性のモノを感じさせられるし、やはり自然と共に生き、自然に真正面から向かい合って生涯を終えた賢治ならではのモノだろうと思った。

 今回驚いたのは、賢治が熱心な法華経の宗教家だったことだろうか。あまり宗教家のイメージはなかったが、言われてみればブドリから読める自己を捨てて人のために生きる姿や、銀河鉄道の夜に見えるキリスト経の姿や死生観は宗教家でないと書けないだろう。

 様々な文献から浮かび上がる宮沢賢治の像は、真っ直ぐで、人のために心からなんでもしてあげれるいい人だったに違いない。とても良い人だったろう、僕とは相容れないくらいに。
 宮沢賢治が今の時代に生きたらどうだろう、とふと思う。彼の生き方はやはり道楽でしか過ぎない一面も確かにある。すべてが自己の利で計算される今の世は彼には住みにくい世に違いない。そして今を生きる僕はこんなワーキングプアな生き方は出来ないし、したくもない。
 
 だが。彼のような人間が生きにくい世であることが、世の中の不幸である気がして僕はならない。寒さの冬にオロオロ歩く人間がいても良い。それで生きてはいけないけれど、そう生きたいと、たまに思うことがある。

読書

文学賞メッタ斬り! 2008年版 たいへんよくできました編 (2008)文学賞メッタ斬り! 2008年版 たいへんよくできました編 (2008)
(2008/05)
大森 望豊崎 由美

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 その年ごとの文学賞(特に芥川直木)をメッタ斬るシリーズの08年版。図書館に入っていたのでさっそく読んで見た。
 今回のゲストは長嶋有と石田衣良だったのだが、まぁ言うわ言うわ。若干大丈夫か?と思うくらい文壇の裏話と痛烈な皮肉を交えての対談は、痛快で、とても面白かった。これ読んで石田衣良は急に好感を持てた。なんといっても悪口を言えない人間は僕は信用しないのでw

 ただ、対談は面白かったのだが、文学賞予想と選評のツッコミはいつもより大人しめだった気がした。もっと毒舌を吐いてもいいのに。
 それにしても、やっぱり都知事と渡辺惇一の選評はこの本を読まずとも、いつも面白いなぁ。文学ってなんだろう。

 基本、賞レースに興味がないと楽しめない本ではあるが、文学好きは非常にハマれる本。寝転んで読むと完璧ですな。
 

読書

特別料理 (異色作家短篇集)特別料理 (異色作家短篇集)
(2006/07)
スタンリイ エリン

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 僕はミステリーというジャンルの本はあまり読まないのだけれど、なんとなく借りてみたこの本はバリバリのミステリーだった。作者のスタンリイ・エリイはEQMM(エラリークイーンミステリーマガジン)誌で何度も賞を受けたミステリーの名手。エリイの代表作にしてデビュー作「特別料理」が収録されている。

 本を開いて驚いたのが、はじめに序文が載ってあるのだが、それがエラリークイーンが書いてること。とりあえず、ベタボメしてた。
 表題作の「特別料理」は短い作品なので詳しくは書かないが、感想としては、クイーンが絶賛してたほど凄いとは思わなかった。むしろ内容としてはよくある話で決して新鮮とは言いがたい。ただ、解説にあるように、むしろこの作品の魅力は、題名からある程度結末を読者に予想させておいて、その結末に至るまでの過程を鮮やかに描くすばらしさだろう。そしてそれは作品集全体にも言える気がする。

 他の作品もそれぞれ面白かったが、斬新と言うほど僕は唸ることは出来なかったが、どれも安心して読むことが出来る。それらはまるで一流シェフの作った特別料理のようだ。
 濃い味付けで舌をごまかしたりはしない。化学調味料に慣れた僕達の口はそれらに始め物足りなさを覚えるかもしれない。だが、丁寧に下ごしらえされた作品本来の風味がやがて僕達の口の中いっぱいに広がって、いつのまにか貪るように本に向かっている。そんな魔力を持つエリイの本は、まさに表題作の特別料理。食べすぎにはご注意を。

 ミステリーはあまり好きではないけれど、こういうタイプの話は好きだ。というかSFでもいいんじゃね?とか思うが、文学の定義は色々曖昧なのでどうでもいいと思った。とりあえずミステリー好きなら抑えておきたい一冊。

読書

火星航路SOS (ハヤカワ文庫SF)火星航路SOS (ハヤカワ文庫SF)
(2006/03)
E.E. スミス

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 ハードSFとかニューウェーブとかサイバーパンクとか、様々なSFのジャンルがあるわけだが、やっぱり僕はスペースオペラが一番好きなのだと再確認させてくれた本。

 作者はスカイラークシリーズで有名なE・E・スミス。宇宙航海中に何者かに襲われたスティブンスとナディアは二人で脱出し、不時着した木星で脱出の手段を探して生活する。途中から話が超展開になってきて土星人やらヘビ型宇宙人とかもうわんやかやになるのはスペースオペラの御愛嬌。

 今これを読むと、なんだかもって回った言い回しやら、破壊ビームといったセンスに思わず苦笑は禁じえないし、木星に普通に大地と大気があったりツッコミ所は満載なのだが、そういった設定は無視してニヤニヤしながら読めるのがスペースオペラのすばらしい所だろう。
 瑣末にこだわるのではなく、ただ、読者を楽しませようとする意思が伺えるし、何より作者も書いてて楽しいんじゃないだろうか、こういうの。

 チープという人もいるかもしれないが、こういう本を読むと、何故か駄菓子屋の安いお菓子の味がしてくる気がする。色のついたニッキ水とか50円くらいのミニラーメンとか。それらはラノベから来るファストフードの味とは違う。ファストフードは何回食べても同じ味と同じ感想しか抱かない。けれど、駄菓子は味は同じでもそのたびごとの感情が違う。子供の味わい。大人の郷愁に満ちた味わい。何度もにっこり笑って違う思いの味を楽しめる。ラノベとSFの根本的な違いはそんなとこかもしれない。

 読んでいて嬉しくなる、何故か懐かしくなる、ほっとする。そんな本だった。

読書

ノーサラリーマン・ノークライノーサラリーマン・ノークライ
(2004/03)
中場 利一

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中場利一の作風を一言で表すと、まさに岸和田少年愚連隊の世界なわけで、チンピラと暴力とヒモとほんの少しの名誉が全てなのだけれど、そんな鉄臭い感じが僕は大好きなのだ。

 そんな中場さんの作品なのだが、この作品、なんだかいつもと違う。舞台はきちんとした大手銀行で、主人公はちょっとダメな男。いつものようにすぐにキレてケンカしたりしない。
 そんな抑えた主人公の鬱憤を晴らすかのごとく自由に動くのが友人のサージ。上司のシートは口やかましいが、時々ふっと優しい目をする。そこには社会があり、システマティックで無機質な仕組みの奥底に、人の情愛が見えてくる気がする。

 中場さんの作品のように、ケンカしたり窓ガラス壊したり、バイク盗んだりしたことはないけれど、そんな架空の過去に僕は少し、憧れる。そして、この作品に描かれるまだ見ぬ架空の未来にも、憧れる。
 とても楽しい本だった

読書

しょっぱいドライブしょっぱいドライブ
(2003/02/25)
大道 珠貴

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大道 珠貴の芥川賞作。老人と若い女性の微妙な距離感を描く。

 おおらかに、何でも許してしまう九十九さんの姿は、女性を放したくない心の裏返しで、そうした微妙にすれ違う心の動きを描いたとか言うと、それっぽいのだろうけれど、僕にはどうしてもそれっぽい小説としか映らなかった。

 なんだか、とても文学っぽい。いわゆる世間が持つ文学のイメージに近い。だからこそ、文学ってこんなものだっけ、とふと思わせられる。
 普通に手堅く上手いんだけど、なんだかすでにある道を法定速度で走っているような印象を受けた。それはそれで良いんだけれど、やっぱり文学者としては、新しい道をブルドーザーで起こすくらいのことをして欲しかったと少し思った

読書

植物診断室植物診断室
(2007/01)
星野 智幸

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 南米大好き星野智幸の本。芥川賞候補にもなってたように思う。

 星野さんのことだから、また読みにくくてラテンアメリカな本なのかと思いきや。非常に軽快な文体で、さらにぜんぜんラテンって無いのでびっくりしてしまった。読みやすいし、面白いぞ!これ。以前、星野さんの「ファンタジスタ」などは読解の限界を感じて脇に追いやった経験があるので、本当に驚いた。

 一人を好む主人公が、シングルマザーに子供の相手をしてくれるように頼まれる話。主人公のフラリとした生き方は確かにヒョロリと伸びる草木のようで、挿入される植物診察でその時々の主人公の心情などを上手く表している。
 ひょうひょうと生きる主人公の姿は、ともすれば村上春樹の登場人物のようなイメージも湧くが、そこまでいたらないのは、彼の子供好きという設定と、やはり文体の違いだろうか。
 濃密な文体は、草木の青臭い匂いすら嗅げそうで、ツタや葉がするすると成長する音を、僕はこの耳で聞いたような気がした。

 賞を取れなかったのは残念だが、とても楽しめた本だった。

読書

方法の冒険 (21世紀文学の創造)方法の冒険 (21世紀文学の創造)
(2001/12)
筒井 康隆

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数人の作家がそれぞれ、文学について色々述べる。なんだかなんだやっぱり、筒井の超虚構性に関する話が一番面白かった気がする

読書

怪獣のいる精神史―フランケンシュタインからゴジラまで怪獣のいる精神史―フランケンシュタインからゴジラまで
(1995/02)
原田 実

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フランケンシュタインから始まり、吸血鬼やキングコングにはてまてゴジラまで、様々な怪獣文学について述べてある本。なんか最後のゴジラの章だけ気色が違って明らかに浮いてたけど、それはさておき。

 文章も読みやすく、意外に娯楽として楽しめました。個人的に面白かったのは、探偵小説の項。探偵小説が存在するには、証拠と証明によって犯罪者が追求される近代的法制度の成立が不可欠だと書かれてて、ひどく納得した。そりゃ、権力と金で揉み消されるしかない時代に探偵もクソもないですな。
 あと、探偵がらみだと、実はサルを使った探偵小説が多いことに触れてあり、人間性と獣性の対比とダーウィンの進化論を絡ませてたりと、なかなかに面白かったのでした。

読書

無限がいっぱい (異色作家短篇集)無限がいっぱい (異色作家短篇集)
(2006/05)
ロバート シェクリィ

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ハインラインやクラークと比べたらあまり知られてないかもしれないけれど、知ってる人は知っている。SFの名手シェクリィの短編集。
 
 このシェクリィという作家は僕も最初は知らなくて、星新一か誰かがエッセイで言及していたのを耳が覚えていたのを見つけて読んで見たわけだが、いやー、面白いですね。
 全体的に背筋をそっと撫でられるような怖さが根底にあるためか、なんとなくグレーのイメージがあるのだがそれはさておき、昨日のラヴクラフトとは違う、全てを語らずに先を読者に想像させる怖さ、といったものがあり、そんなスパイスがいくつものフィクショナルな話の上に降りかけられて僕達の前に次々と出されていく。
 そのスパイスがゆっくりと利いてきて、僕達はうん、見事だ、と舌鼓を打たされるのだ。
 
 犯罪を犯そうと思う人の精神波をキャッチして、電流を流してその人を止めるようプログラムされた鳥ロボットの暴走を書いた「監視鳥」は、最後にその鳥ロボを退治するタカ型ロボットの完成で幕を閉じるが、そのラストは、タカが鳥を破壊した後に、ヒッチコックのごとくいっせいに人間達に襲い掛かる姿を暗示させる。

 決して派手さや斬新さはないかもしれないが、だからこそ地の上手さが際立った気がする。もっと評価されても良いSF作家であった

読書

ラヴクラフト全集 (1) (創元推理文庫 (523‐1))ラヴクラフト全集 (1) (創元推理文庫 (523‐1))
(1974/12)
H・P・ラヴクラフト大西 尹明

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 怪奇小説家のラヴクラフトの全集1巻。名作「インスマウスの影」が収録されていた。

 ラヴクラフトはオカルト小説好きで知らなければモグリといった作家で、彼の作品に共通して通じる架空の世界観はクトゥルー神話という名でよく知られている。
 僕も名前くらいは知っていた程度で、読んだことはなかったのだが、全集が文庫で出ていることを知り、さらに図書館にバッチリあることを発見したのでさっそく借りて読んで見た、と。

 読んだ感想だが、とてもチープな表現しか使えなくて残念だが、めちゃくちゃ面白かった。SFとも怪奇とも異端とも分類できるだろうが、作品に共通してある怖さ。ホラーと言ってもいいかもしれない。異形の怪物の精緻な描写などは、まるで腐臭すら漂ってきそうなほどのリアリティを持っており、予想を見事に裏切ってくれるストーリーの作りこみは賛美に値する。

 ただ、僕はかなりハマった口だが、たぶん、この作家は好き嫌いが分かれるだろう、とも思った。怪物の描写などは魚類形が多く、「インスマウスの影」ではカエルと魚の合いの子のような怪物が出てくるが、はからずもイメージでは可愛いんじゃないか、と思ってしまったのもまた事実で、異形としての魚の描写に欧米だなぁ、としみじみ思わされた。
 そういう所や、話の展開にツッコミたくなると、この作家は読めないかもしれない。

 ただ、ボルヘスやもしかしたら小松左京なんかが好きな人ならばぜひお勧めしたい作家である。オカルト好きは必読であろう。イア!イア!

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